フランク・ロイド・ライトが設計した東京に唯一残る公共建築、自由学園明日館の保存運動に接した時、私たちはライトと日本の関わりにドラマを見ました。

私たちは明日館の美しさに感動し、ライトと日本の深い関わりを知ったのです。ライトは、大正の日本に住み、日本のために１０を超える建物を設計し、日本の多くの建築家の目を開きました。それだけでなく、ライトは米国に戻った後も、太平洋を越え、交友と信頼の架け橋を築いていたのです。

偉大なる建築家の長編映画の企画と詳細調査を進める過程で、私たちはライトが日本に残していった大事なものがうまく継承されていないことに気付きました。それは、ライトを知る第一世代の喪失、文化的価値を認めにくい社会構造、資料の紛失／散逸によるものでした。

ドキュメンタリー作品「偉大なるオブセッション：フランク・ロイド・ライト／建築と日本」は、２００２年に、私たちがそれに気付いた時に生まれたと言っても過言ではないでしょう。資金協力も、事前のテレビ放映契約も、ハイビジョン機材もありませんでしたが、私たちは、ライトの有機的建築に触れた多くの人たちに会い、光の中で色を変える建物、色褪せはじめた写真、そして失いかけた想い出の記録と再生に注力しました。何よりも、大切なものが失われる前に記録することが重要だったのです。そして、この記録が、ライトと日本の関わりを語る最初のドキュメンタリー作品になったのです。

しかし、１３３分のドキュメンタリー映画には限界があります。１００人を超えるインタビューの全てを紹介することも、私たちが確認した現存する全ての資料をお見せすることもできないのです。さらに、写真やビデオでの記録だけでは、資料の散逸を防ぐことはできません。この思いが特定非営利活動法人 ライト建築アーカイブズ日本設立への注力に繋がったのです。

今も、都市は広がり、高く伸び続けています。その結果、街は色と形を変え続けています。経済的価値に変換できない文化的遺産を失わずに伝えていきたい。そんな私たちのオブセッションが次の世代に伝わっていくことを望んでいます。